耳より!SPかわら版

医療現場に求められるリーダー像

第11回:ハラスメントを避けるために

"第11回:ハラスメントを避けるために 部下・スタッフを率いるリーダーにとって一番厄介なことは、チームのために良かれと思ってした指導が、部下やスタッフの側からはハラスメントとして受け取られてしまうことです。「確かにちょっと厳しく言ったかもしれないが、あの程度で訴えられるとは思わなかった」ということが起きてからでは手遅れです。なぜなら、賠償責任を問われる訴訟問題に発展すると、当事者のみならず病院全体に対しする否定的な評価が広がってしまい、信用が取り返しのつかないほど大きく損なわれるからです。そのような事態にならないように、ハラスメントが生じない職場環境を目指して、怒りの感情をコントロールできるようになりましょう。 ハラスメントという言葉が含む内容は多岐に渡ります。法令用語として認められているセクシュアルハラスメントの他に、パワーハラスメント、アカデミックハラスメント、ジェンダーハラスメント、マタニティハラスメント等色々あります。一般的には「社会通念に照らし客観的な見地からみて、通常人が許容しうる範囲を著しく超えるような有形無形の圧力を加える行為」がハラスメントだと言えます。厚生労働省が示したパワーハラスメントの具体例には、身体的な攻撃(暴行、傷害)、精神的な攻撃(脅迫、侮辱、暴言)、人間関係からの切り離し(隔離、仲間外し、無視)、過大な要求(業務上の合理性がなく、能力や経験とかけ離れた仕事を命じる、仕事を与えない)、個の侵害(私的なことに過度に立ち入る)といった6パターンがあります。 感情トラブル回避術 ハラスメント行為が病院内で見られると、チームの士気は低下し、各自の能力発揮に支障が出る上、精神面での健康が損なわれてしまいます。ハラスメント行為は職務が上の人から下の人へ向かうとは限りません。スタッフ同士が結託して、スタッフが持っている情報を敢えてリーダーに伝えない状況が何度も生じれば、それはハラスメントと捉えることができるでしょう。(但し、その場合はリーダーの管理者としての資質を問われる可能性はあります)。また、患者が執拗に病院の医師やスタッフに説明を求めることでも生じる場合があります。 こうした行為は、反射的に感情に任せて怒鳴ったり、つい身体的な又は精神的な攻撃をしてしまったりするなど、怒りの感情をコントロールできず、コミュニケーション不全から引き起こされることが少なくありません。したがって、各自が怒りの衝動をコントロールし(6秒)、怒りに対する許容量を考え方・思考のコントロールで大きくして耐性を強め、必要な怒りに対しては状況を変えることができるか、できないかを整理した上で行動プランを立ててください。 さらに、それぞれの病院やチーム内でハラスメントに関するガイドラインを作成し、事前に「何をするとハラスメントに該当するか」といった情報を共有しておくことは、ハラスメントの未然防止につながります。但し、そうしたガイドラインを過剰に意識するあまり、必要な指導を適切に行うことまでためらっては本末転倒です。怒り・イライラと同様に、必要な指導とそうでないものの区別を明確にすることがリーダーには求められます。 "

2016-06-14

"一般社団法人日本アンガーマネジメント協会認定 アンガーマネジメントシニアファシリテーター 須田愛子 "