耳より!SPかわら版

医療現場に求められるリーダー像

第10回:行動のコントロール

"第10回:行動のコントロール 医療関係者はリーダーであろうとスタッフであろうと、「怒らなくなること」を目指す必要はありません。必要のある怒りについては上手に怒ることができるようになり、怒る必要がないことは怒らなくて済むようになる。それが怒りの感情をコントロールするということです。今回は、怒る必要があると感じた際にどのように行動をすれば、後悔や罪悪感を感じることがないのかについて考えます。 その前に、前回の思考のコントロールで述べた「べき」について思い出してみましょう。自分の希望・欲求を象徴する言葉である「べき」は、自分にとって大切な価値観を反映しています。あなたは仕事上でどんな「べき」に基づいて毎日行動していますか?そうした「べき」は普段、無意識下に置かれていることが多いので、すぐには出てこないかもしれません。自分の「べき」を理解していないと、いつまで経っても対処の方法が見えてこないので、怒りの感情の付き合い方がわかりません。そこで、イラッとしたら記録を取り(アンガーログ)、その裏にある「べき」を書き出し、自分にとっての重要度を考えてみてください。書き出すことで自分が、いつ、どこで、どうやって、どのくらいの強さで怒るのかが分かるようになります。 感情トラブル回避術 リーダーとしてどうしてもここは譲れない、許容できない事柄があれば、怒ることで又は怒らないことで後悔しないように、行動プランを考えましょう。その際、イライラを解消するために自力でその状況を変えられる(コントロールできる)のか、変えられない(コントロールできない)のかをまず考えてください。つまり、自分が何らかの行動をすることで、イライラの元になっている状況を変化させることができるのか、できないのかということです。例えば、次の事柄について許容できないと感じたのであれば、状況を変えられるか、変えられないかのどちらかに仕分けてください。 ・次々に患者さんが診察に来る ・スタッフ同士でおしゃべりをしている ・スタッフの一人に伝えたことが、全体に伝わっていない ここでは許容できない事柄のみ、行動プランを考えます。もし上記のような事柄に対して「まあ、それはしょうがない」「そういうこともある」と許容できるのであれば、それらについては「怒らない」と決めて常にその状態を保ってください。 変えられない事柄・状況に対して、どうにか変わってほしいと願えば願うほどイライラが嵩じます。例えば、患者さんが多いことについて「なんで今日はこんなに多いんだ」と不満を周囲にぶつけても状況は変わらないでしょう。であれば、変えられないという事実を受け入れた上で、具体的で現実的な対処策を取るのです。その際に前回お伝えした「せめて、少なくとも、最低限」といったキーワードを活用することも一案です。この場合は、「せめて患者さんの表情やしぐさを確認して声をか掛け、返事を聞くまで待つ」が、それ以上の時間が取れないのは仕方ないと考える、といった具合です。 他方、変えられると思えば、いつまでに、どうやって、どの程度、変えられるのかを考えて、ゴールを見据えた行動プランを立てる努力をしてください。「いい加減にしろ」「指示したことをなぜ全員に伝えないんだ」とイライラし、不平不満を出すことがここでの選択肢ではありません。次の打ち合わせの際に、スタッフ全員に対して、必要な情報交換と私的なおしゃべりを区別するように伝えるといったことを選択してください。行動プランに正解はありませんし、行動しても望んだ結果にならないことも多々あります。試行錯誤を繰り返して、ご自身の怒りをコントロールしてください。 "

2016-06-07

"一般社団法人日本アンガーマネジメント協会認定 アンガーマネジメントシニアファシリテーター 須田愛子"