耳より!SPかわら版
医療現場に求められるリーダー像
第9回:思考のコントロール
"第9回:思考のコントロール イライラする時、私たちはどのように考えているのでしょうか? 「なんであの人は、周囲に人がいるのに大声で怒鳴るのだろう」 「どうしてAさんに伝えたことがBさんに伝わっていないのか」 「すぐやるって言ったのに、まだやっていないじゃない!」 など、イライラや怒りを感じる背景には、私たち自身の希望や欲求が満たされていない事実、目の前で叶えられていない現実があります。それを端的に示す言葉が「べき」です。上記のイライラの原因を探ってみると、このような「べき」が見えてきます。 >周囲に人がいる場所では大声で怒鳴るべきではない >情報はチーム内で共有すべき >決めたことはすぐ行動に移すべき 感情トラブル回避術 人は誰しも自分が大切にしている「べき」や「価値観」があります。それが叶えられないことで自分が周囲から軽んじられていると感じたり、「常識がない人だ」と断定してみたり、自分の価値観を否定された、攻撃されたように感じて、逆に反撃に出てしまったり、ということが起こります。怒りとは本来、自分にとって大事なものや考え方、判断基準、価値観等を脅かされそうになった時に 、そうした大事なものを守るために自然に湧き上がってくる防衛感情だからです。 リーダーの立場にある人は、自分が大切にしている価値観を意識することと同時に、チームメンバー1人ひとりがどのような価値観を持っているのかを把握できるようになると、チーム内での意思疎通がスムーズに運ぶようになるでしょう。仕事上では、チーム•組織として全員が守る「べき」と、個人個人の「べき」の間に差が生じることは日常茶飯事です。各自の「べき」はその人にとって大切なものであることを認めつつも、チームとして働く上では優先順位が異なる場合があることを理解してもらいましょう。 例えば、「患者さんとのコミュニケーションを大切にするべき」というチームの方針については共通の理解が得られていたとしても、どのように大切にするかは人によって、その程度が異なります。「全員へ満遍なく対応」を優先するリーダーと、「目の前の患者さんの気持ちに寄り添うべき」と考えているスタッフとでは、患者さん一人に掛ける時間の程度が異なるため、チーム内でイライラが生じる可能性があります。スタッフはリーダーに対して「事務的すぎる」と感じるかもしれませんし、逆にリーダーはスタッフに対して、「他の患者さんをないがしろにしている」と感じるかもしれません。このような場合には、「せめて、少なくとも、最低限」といったキーワードを使って考えてみてください。 患者さんの数が非常に多い場合に「せめてどういう状態なら、患者さんとのコミュニケーションを大切にすることができているのか」を考えます。 「詳しい話は後にしてでも、少なくとも一人ひとりに声を掛ける」 「最低限、患者さんの表情やしぐさを確認して声を掛けるようにする」 または、「少なくとも他に待たされている患者さんがいないのであれば、時間をかけて聞くのは問題ない」と考えられれば、不必要なイライラが減ってくるでしょう。 自分の価値観は自分にとってかけがえのない考え方の基準です。それと同様に、自分以外の人にも、その人にとっては大切な価値観があります。それらは大事にしつつも、チームとして行動する上では、どこかで自分の価値観を少し引っ込める必要が出てくることもあるでしょう。チームの行動指針を考える上で、「せめて、少なくとも、最低限」といったキーワードを使って折り合える接点を見つけてください。 "
2016-05-31
"一般社団法人日本アンガーマネジメント協会認定 アンガーマネジメントシニアファシリテーター 須田愛子"