耳より!SPかわら版
医療現場に求められるリーダー像
第7回:伝わる叱り方:相手のタイプを見極める
"第7回:伝わる叱り方:相手のタイプを見極める 「怒る」と「叱る」は、日本アンガーマネジメント協会では「相手の行動に変化を促す」こととして同列に捉えていますが、一般的には「怒る」と「叱る」は別のものと考えられています。自分の感情を表に出して、自分の損得のための行為が「怒る」、相手の成長を願い自分の経験を通して伝える行為が「叱る」です。喩えて言うなら、2-3歳の子供にでも怒ることはできますが、叱ることはできません。 また、新しいメンバーを指導するにあたって、教える、伝えることをしても、それらが相手に「伝わって」いなければ、改善すべき点も改善されないでしょうし、相手の成長につながりません。さらにはチーム内での意思疎通も不十分になります。伝えるだけではなく「伝わる」叱り方を意識しましょう。 感情トラブル回避術 そのためにはまず、相手のタイプを見極めることが肝要です。時間優先でポイントのみをストレートに伝えるのが良いのか、相手に納得してもらうまで目的や理由を丁寧に説明するのが良いのか、先に行動してもらい後からフォローをする形が良いのか、メンバーの性格や行動パターンを見極めながら、各自に合った叱り方を考えてみてください。 また日頃、チームの中で意思疎通を図る上で、問題のある表現が出ているかどうかも確認しましょう。問題のある表現方法には次の2つがあります。 •主張的(攻撃的) •非主張的(受身的) 主張的(攻撃的)な人は自分の言いたいことや相手への要求を一方的に言う傾向があります。その結果、周囲の人達に威圧感を与えたり、相手の気持ちを無視したり、理論的に言い負かしたりします。リーダーが精神的に余裕のない場合に言ってしまいがちな言葉として次のようなものがあります。 「できると言ったのはあなただよね」 「その仕事は今日中にやって欲しいと言ったよね」 「そんなことは後でいいから、今すぐこっちをやって」 「できもしない口約束をする人なんだ」 対照的に、非主張的(受身的)な人は自分を抑える傾向にあります。言いたいことを言い損なう(口には出さずに心の中でつぶやく)、言い訳が先に立つ、間接的に遠回しに言うといった行動が見られます。日常の仕事が受身的(指示を受ける、仕事を頼まれる)な人や、相手を立てることが習慣化している人は、次のような受け答えになります。 「•••(どうしてこの人はこんな言い方しかできないのだろう)」 「やるつもりはあったのですが、他の仕事が忙しくて•••」 「でも、この前はあちらを先にやってほしいと聞いたので」 「あの時はできると思っていたのですが•••」 いずれの場合も、チームとして上手く機能しません。リーダーが相手に伝わるように叱るには、主張的(攻撃的)にならないよう、お互いの主張や立場を尊重した表現の仕方を心がけましょう。そのためには、相手の意見を受けとめた上で、問題解決のためにお互いが歩み寄れる部分がどこか、話し合いましょう。その際に以下の3点を意識すると、より伝わりやすい叱り方になります。 1)相手の人格ではなく、行動に焦点を当てる OK:チームで決めた約束は守ってほしい。 NG:本当にいい加減な人だよね。 2)叱る時は具体的に OK:検査前にご家族に検査の内容を伝える必要がある。それを失念したのはあなたのミスだ。次からは必ず事前に伝えてください。 NG:なんで、きちんと伝えなかったんだ。 3)私を主語にする OK:私はあなたに同じミスをしてほしくない。 NG:どうしてあなたは何度も同じミスをするんだ。 相手に伝わりやすい叱り方を意識しましょう。 "
2016-05-17
"一般社団法人日本アンガーマネジメント協会認定 アンガーマネジメントシニアファシリテーター 須田愛子"