耳より!SPかわら版

健診現場で活かす!アンガーマネジメント

第5回:感情的に言っていませんか?

"第5回:感情的に言っていませんか? 健診現場で働く医師およびスタッフが受診者を相手にする際に絶対に避けたいことは、その場の怒りの感情を即座に表に出すことです。私たちは人間ですから、湧き上がる怒りの感情を抑えることはできませんし、抑える必要もありません。「まったくもう、いい加減にしてほしい」「なんであんな態度を取るのだろうか」「こっちの仕事を邪魔しないでほしい」といった感情を抱くこと自体には良いも悪いもないからです。 ただし、感情に身を任せて反射的にとってしまった言動や行動(例えば、舌打ちをする、実際に「まったくもう、いい加減にして!」と怒鳴る、受診者ファイルを机に叩きつける、あまりに強い怒りを覚えて「もうやっていられない」と仕事自体を放棄するなど)は、取り返しがつきません。そのような言動・行動をすることで、共に働く医師・スタッフとの人間関係がギスギスしたものになったり、「あの先生が来ると現場の雰囲気が悪くなるのよね」と陰口を叩かれたり、最悪のケースでは社会人としての信用・信頼を失ってしまったりすることもあるでしょう。 さらに反射的な行動を起こした後は、後悔したり、自責の念にかられたり、罪悪感を覚えたりすることが多いので、ネガティブな感情を心の中のコップが負の感情でいっぱいになり、怒りとなってあふれ出るといった悪循環が生じてしまいます。 悪循環を止めるために、感情的に言うのではなく、感情を伝えるようにしてみましょう。ポイントは、怒りが湧き上がってきたときに、何に対してどのように感じたのかを言葉にして伝えることです。次のような場面で、「感情的に言う」と「感情を伝える」の違いについてみてみましょう。 感情トラブル回避術 【担当者が一度決めたことを変更し、関係者全員に周知していなかった】 感情的に言う:「なんで決めたことを変更するのですか。しかも、あの先生は知っていて、私にだけ伝わっていないとはどういうことですか。許せません。」 感情を伝える:「一度決めたことが変更されてしまうと、こちらの予定を再調整しなくてはならないため困ります。しかも、変更が私に知らされていなかったことで非常に困惑しています。」 さらに、実際はどうしてほしかったのかを言葉にして伝えることで、相手が今後どうすべきなのかが明確になります。 「一度決めたことは変更してほしくありません。それが無理なら、変更点を必ず私にも伝えてください。」」 このようなことは言わなくてもわかる筈、と感じていることでも、それが単なる自分の思い込みに過ぎないことが世の中には多々あります。人には感情的に言われると(=怒りの感情をぶつけられると)、自分が攻撃されたように感じて、相手に対して心のシャターを閉じ防御体制に入ることがあります。怒られて黙り込む人は、まさに防御体制に入っている状態なのです。そうなると、その後どんなに理事整然とした、ロジカルな話をしたとしても、怒られた人は耳を閉じている状態と同じなので、聞こえていないし、心にも響きません。その結果、注意したことと同じミスを重ねることになるのです。したがって、怒りが湧き上がってきたときには、何に対してどのように感じたのか、実際はどうしてほしかったのかを、あえて言葉に出すようにしてください。 "

2015-11-03

"一般社団法人日本アンガーマネジメント協会認定 アンガーマネジメントシニアファシリテーター 須田愛子"