耳より!SPかわら版

健診現場で活かす!アンガーマネジメント

第2回:周囲の怒りに巻き込まれていませんか?

"第2回:周囲の怒りに巻き込まれていませんか? 健診業務の現場は、初対面の人が多いため緊張感が高まることでストレスを抱えやすいうえ、受診者からの怒りをぶつけられやすい環境でもあります。今回は特に、「受診者からの怒りに巻き込まれることなく業務を遂行する」という視点で考えてみましょう。健診現場では、以下のような受診者からの理不尽な怒りに対応しなければならないこともあるのではないでしょうか? 受診者:まったく、この忙しい時期にどうして健診を受けなきゃいけないんだ。俺には具合の悪いところなんかないんだ。健診自体が時間の無駄じゃないか。 受付:申し訳ございませんが、健診中ですので大きな声は控えていただけますか? 受診者:一体誰に対してモノを言っているんだ。俺はXYZ社の営業部長だぞ。 受付:業務の支障となりますので、ご理解のほどをよろしくお願いします。 ---------- 医師:次の方、どうぞ。 受診者:早くしてくれ。こっちは時間がないんだ。 医師:そう言われましても、手順がありますのでそれを飛ばすことはできません。 受診者:なんだその言い方は。融通が利かない医者だな。こっちは急いでいるんだ。さっさとしろ。 医師:・・・ 「怒りは伝染する」性質があります。さらに怒りのエネルギーは他の感情と比べて非常に強いので、上記のような場にいれば、直接関わりがない医師やスタッフも、不愉快に感じたり不機嫌になったりします。周囲に当たり散らしている人を見ているうちに、「いい加減にして欲しい」「目の前から消えて欲しい」と自分がイライラしてくるようなら、それは他人の怒りに巻き込まれている証拠です。どこまでが相手の怒りで、どこからが自分の怒りなのか線引きができるようになると、または他人の怒りは自分には直接関係がないと割り切ることができれば、相手の怒りから距離を置くことができます。 感情トラブル回避術 イライラを生じさせるものは、誰かのせいや目の前で起きた出来事のように感じることがありますが、実は自分自身の中にある考え方、願望・理想・欲求・希望などを表す時に使われる言葉である「べき」が大きく影響しています。では、先ほどの場面で受診者、受付、医師のそれぞれの立場での「べき」を想像してみましょう。 ・受診者のべき:地声に文句を言うべきではない、立場を敬うべき、融通を利かせるべき ・受付のべき:周囲に迷惑をかけないべき、立場を持ち出すべきではない、業務には協力をするべき ・医師のべき:診察は手順どおり行うべき、受診者は医師に従うべき 自分と同じ「べき」を持っている相手に対して怒りを感じることは、基本的に少ないです(ただし、同じ「べき」を共有していても、その度合いが異なることでギャップが生じることはあります)。一方、自分の「べき」とは異なる、相容れない「べき」を前面に出された時、「信じられない」「常識外れだ」「ふざけるな」といった思いがイライラ・怒りの感情と共に生じるのです。相容れない「べき」に直面した時には、その人の行動の背景に想像を巡らしてみましょう。例えば、受診者の行動の背景にはこのようなことが考えられます。 ・今月の営業ノルマが達成できていない ・部長になったばかりで重責 ・大きい声は自分の武器 ・診断結果に問題があると昇進に響くと思い込んでいる、等 背景を想像すると、それまで絶対に許せないと思っていたことが、「それじゃあ仕方ないよね」と許容できるようになるのではないでしょうか。 アンガーマネジメントは「自分」の怒りをコントロールするためのものであり、「他人」の怒りを抑えるために何か手段を講じたり、怒りをなだめたりするための考え方ではありません。私たちが他人を変えようとどんなに努力しても、その人自身に変える意思がなければ変わりません。まず、自分がどんなことでイライラするのか、その裏にある「べき」は何なのか知りましょう。 "

2015-10-13

"一般社団法人日本アンガーマネジメント協会認定 アンガーマネジメントシニアファシリテーター 須田愛子"