耳より!SPかわら版

感情によるトラブル回避術

第12回:べきログ:怒りにくい頭へ 〜その3〜

"ブレイクパターン:怒りにくい頭へ 〜その3〜 これまでに紹介した「アンガーログ」や「べきログ」で怒りを記録していくと、同じような場所、相手、仕事のやり方などでイライラしていることに気づきます。これは同じパターンで怒ることが多いということです。 今回はイライラのパターンを自ら壊す(=ブレイク)テクニック、「ブレイクパターン」を紹介します。 例えば、病院勤務経験20年目のベテラン医師は次のようなことでイライラしています。 ● 「前回と同じ薬を出しておきます」と伝えたら、「あの薬は本当に効くのか。ちゃんと飲んでいても体調に変化が感じられない。別の薬を処方してほしい」と要求する患者様 ● 「患者様の容態に異変が現れたら報告しろ」と言っているのに、異変がないことをわざわざ報告してくる新人看護師。 ● 病院を訪問するMRに、以前依頼した仕事と同じことを頼んだら、「上司の確認を得ないと対応できない」とすぐに取り掛かってくれなかった 感情トラブル回避術 これらの状況はまったく違うことや人に対してイライラしているようですが、ここには一定の傾向が見られます。それは、「自分より立場が下の人間は、自分の言うことをきくべき」という考え方が根っこにあるのです。自分より下の立場にある患者様、看護師、MRであれば、自分の言うことに従うのは当たり前で、反論・意見したり、必要としていない報告をワザワザしたり、断ったりするのは言語道断、あり得ない。けれども、現実には、このベテラン医師が思っているように事は運ばないから、イライラするのです。ここでベテラン医師が「立場が自分よりも下だからといって、自分の思う通りに常に相手が動くとは限らない」と考え直すことができれば、それだけで怒りも軽減されます。 こうした特定のイライラのパターンを知れば、対処しやすくなります。まず、自分の怒りのパターンを崩すには、イライラした出来事について認識を考え直します。その上で、具体的に行動を一つ変えてみるのです。実践する上でのポイントは、どんな小さなことでも良いので、いつもと異なることを「一つだけ」行うことです。一度に行動をたくさん変えると、それ自体のハードルが高くなり、実際どの行動の変化が効果的だったのかがわからなくなってしまうからです。 いつもと違うことを一つ試して、どんな変化が生じるか確認してみてください。 例えば、別の薬の変更を要求する患者様には、薬の説明の前に「何が一番不安ですか」と質問をしてみる、MRに対しては「明日中に確認してほしい」と期限を伝える、というように「こんな風にしたら自分の怒りが軽減されるかも、または少しは気持ちが楽になるかもしれない」と思う方法を試してください。 また、怒りのパターンに限らず、日常的にパターン化された行動(朝のテレビ番組、通勤の時間、通勤電車の車両、乗降する駅、など)をあえて自ら変えることによっても、行動の柔軟性を身に付けるトレーニングになります。 自分がはまっているパターンを知る洞察力がついてくると、実際にどのように行動を変えると良いのかがわかり、「一つだけ」行動を変えるトレーニングを行うことで、柔軟性がついてきます。これまで「アンガーログ」や「べきログ」で記録した怒りを振り返ってみましょう。 どのようなパターンが見つかりますか? そしてそのパターンを壊す具体的な行動を考えて、実行してみましょう。 これまで12回にわたって、アンガーマネジメントの考え方やテクニックを紹介してまいりました。皆様が怒りの感情をコントロールする方法を知り、仕事上で、また家庭の中で、イライラを解消する一助となれば幸いです。最後までお付き合い下さり、ありがとうございました。 "

2015-06-23

"一般社団法人日本アンガーマネジメント協会認定 アンガーマネジメントシニアファシリテーター 須田愛子"