耳より!SPかわら版
感情によるトラブル回避術
第5回:"親子間の感情サイクル "
"親子間の感情サイクル 感情は何かのきっかけがないと生じることはありません。満開の桜を見て、美しい・素晴らしいと感じる人もいれば、親しい人を亡くした時期と重なっていることで桜を見るたびに胸が締め付けられるように切ない思いをする人もいるでしょう。 ただし、「怒り」の感情に関しては、景色によって生じることは(ゼロではないかもしれませんが)まずありません。私たちが日常経験する怒りの感情は、自分以外の人・出来事などと接することで沸き起こるものです。どのように怒りの感情が生じ、どのような段階を経て、状況がより悪化するのかといった感情サイクルがわかると、子どもに対して、患者様に対して、同僚に対してイライラした時に、どの段階で気付けば状況を改善できるかがわかります。そこで今回は、子どもを含む他人と接することで生じる感情サイクルに焦点を当ててお伝えします。 前回のコラムで書きましたが、私たちを怒らせるものは「べき」という言葉が鍵になっています。「べき」は「コアビリーフ」とも呼ばれ、各自の心の中にある辞書のようなものです。 例えば、とある患者様の辞書には「見舞いは面会時間内にするべき」とあるにもかかわらず、そうでない出来事が起きた時、その出来事がどういう意味を持つのかという思考「時間を守れない非常識な人だ」が生じ、その思考からイライラ・怒りの感情が生まれます。 そして、イライラを引き起こした対象に「帰ってくれと怒鳴る」といった何らかの行動を起こし、その行動によって相手が譲歩する・受け入れると、「イライラした時は怒鳴れば良いのだ」と学習します。そして同じような状況に出くわすと、過去の経験から同じ行動をするようになります。 感情トラブル回避術 親子間ではそこまでの複雑さはなく、以下のような流れとなります。 ① 何かのきっかけで、子どもの怒りが爆発、駄々をこねる ② 親は子どもを助けようとする ③ 親は適切でない伝え方、慰め方、叱り方をする ④ 子どもはさらに気分を害して、コントロール不可能な状態になることもある ⑤ 親は余計にイライラし、理性が働かなくなる ⑥ 親から子どもへの行動が不適切だと、1.に戻り悪循環 ここで気をつけなければならないことは、子どもが駄々をこねて強く主張した行動が受け入れられると、その行動が「正しいもの」として認識されてしまうことです。私たちは子どもの時からこのようにして「自分のべき」を形成していきます。 例えば、子どもがお菓子を欲しがってスーパーマーケットで泣き喚いた結果、要求が叶えられる経験をすれば、以後同じように繰り返し、その度に程度が強まっていくことが考えられます。 では私たちはどのように振る舞えば良いのでしょうか? 一番重要なことは、私たち自身が相手(子ども、患者様、同僚)の怒りに巻き込まれないようにすることと、③の段階での伝え方に気を配ることが肝心です。にもかかわらず、私たちは次のような伝え方をしてしまいがちではないでしょうか? 「なんでそんなに大きな声で怒鳴るの? 怒鳴っていたらわからないから、わかるように説明して」「どうしてそんなことで怒るの?もっと気楽に考えたらいいのに」などと、相手が怒っていることの原因を追求する言い方を③の段階で行ってしまうと、相手は気分を害します。 そして、論理的には反論の余地のない、至極まっとうな正しい内容であっても、相手は聞く耳を持たなくなります。 そこで、次回は効果的な伝え方、慰め方、叱り方を説明します。 "
2015-05-07
"社団法人日本アンガーマネジメント協会認定 アンガーマネジメントシニアファシリテーター 須田愛子 "