耳より!SPかわら版
感情によるトラブル回避術
第4回:私たちを怒らせるもの
"私たちを怒らせるもの 今回は、私たちが何に対して怒りを感じるのかについて考えてみましょう。私たちが怒りを感じるのは、目の前にいる相手(患者様、働く同僚の医師、看護師、その他一緒に働く職場のメンバー、子どもを中心とした家族)に対してでしょうか?出来事に対してでしょうか? 例えば、患者様に何度説明しても理解しようとしない事や理解できない事、又は何度も同じ質問をする事、看護師がこちらの指示を最後まで聞かずに行動し、結果的にミスにつながった事、保育園からの帰宅途中で子どもが道草をして家に戻る時間がいつもより遅くなってしまった事など、相手の人に対してではなくそれが起きた出来事に対してでしょうか? それとも、何度繰り返し言っても変わらない相手の態度、姿勢、信条・信念、習慣のようなものに対してでしょうか? 改めて考えてみると、目の前の人のような気もするし、出来事のような気もするし、変わらない態度のような気もしませんか?私たちが普段怒るとき、これらについて厳密に分けて考えてはいないと思います。それが普通なのです。 なぜかというと、私たちが怒る原因になっているのはこれらのどれでもなく、「べき」という言葉に象徴されるものだからです。 感情トラブル回避術 「べき」は、私たちの願望、理想、欲求、希望などを表すときに使われる言葉です。 患者様には丁寧に説明するべき、看護師は迅速に医師の指示を遂行するべき、職場環境は清潔・整理整頓されているべき、職場内ではお互いに気を利かせるべき、子どもは親の言うことを聞くべき、躾は厳しくすべきなど、私たちは日常生活の中で無意識に自分の「べき」に従って行動しています。 この「べき」が現実には思い通りにならず悔しい又は悲しい思いをしたり、目の前で裏切られて「許せない」と感じたりして、心のコップから第一次感情があふれ出る時に、怒りという形で表面化するのです。 状況をもう少し詳しく設定して「べき」を考えてみましょう。医師として、患者様に今後の治療の方法や投与する薬について説明します。ところが、その患者様はあなたが何度説明しても「その治療方法以外の選択肢はないのですか?他の薬ではなぜダメなのですか?」と納得する様子をみせず、説明の仕方を変えても理解しようとしません。他の患者様が後に何人も控えており、あなたはイライラしてきます。この時あなたはどんな「べき」を持っていて、それが思い通りにならなかったのでしょうか? おそらくこのようなことが考えられます。 ●患者様は医師の判断・指示には従うべき ●患者様は医師を尊敬するべき ●患者様は自分のことばかりでなく周囲の状況も考えるべき ●時間は有効に使うべき これらの「べき」がことごとく裏切られると、心の中にあるコップにネガティブな感情が一気に注ぎ込まれることになり、どこかの段階であふれて怒りとして現れます。 こうした状況の時に私たちが絶対にやってはいけないことは、反射的な言動を含めた行動です。大きな声で「いい加減にしてください。納得できないなら、他の病院に行ってください」とでも言おうものなら、自分だけでなく病院にとっても一大事に発展しかねません。 ではどうしたら反射的な、瞬間的な怒りを出すことなく自分でコントロールすることができるようになるのか。その方法については、第7回以降でお伝えしたいと思います。 "
2015-04-28
"社団法人日本アンガーマネジメント協会認定 アンガーマネジメントシニアファシリテーター 須田愛子 "