耳より!SPかわら版

コラム

第2回:レセプト病名と保険財政と医師の使命とのバランスはいかに?

"レセプト病名 前回に引き続き。河野グループの提言について触れたいと思います。この中のもう1つ目を引く内容として、「レセプト病名をなくすために薬の保険適用を整理すべき」という項目があります。レセプト病名の代表例は、胃炎でしょう。痛み止めなどの薬を投与する際に、胃へのダメージがあるために、胃炎などの病名をレセプトに記載して胃粘膜保護剤などを投与するケースがあります。このように、実際の病名とは違う病名がレセプトに記載されているものを俗にレセプト病名と呼んでいるようです。本来予防投与では、保険適用にならないので、こうしたことが「現場の知恵」として行われているようです。 ジェネリック医薬品イメージ 適応外処方 さて、そのいわゆる適応外処方ですが、ある薬局の調査によると、薬局で分かった範囲で薬の本来の適応症と患者の告げる病名・症状の食い違い、いわゆる適応外処方が20%ほどあったとされています。これは施設によっても多少の変動はあると思われますが、この数字は一般のイメージよりはるかに多いようです。こうした適応外処方が多い背景には、コストなどメーカー都合で適応症を取得していないケースもあり、一概に保険適用外の処方そのもののが問題とは言えない部分があります。政府もそのことは理解しているようで、最近では公知申請が弾力的に運用されたりするなどして、解消されつつある部分もあります。しかしながら、小児への適応症の問題など、一筋縄ではいかない部分もあります。ただ、その一方で無駄撲滅の一環に掲げられるように、レセプト病名の多さが医療費の問題につながっているという認識があることも事実でしょう。 昭和55年通知 薬の適用外使用については、有名な昭和55年通知と呼ばれる当時の厚生省の通達があります。これにより海外の多数の使用例など一定の学術的な根拠のある場合には、添付文書の効能効果を弾力的に運用することになっています。ただ、それをどこまで認めるかは、地域や審査機関によっても統一されず、保険適用という観点からはどこかに線を引かなくてはならないのですが、この点やや不明瞭でしばしば議論の対象になっています。 しかし、そもそも患者の治療のための保険制度であることを考えると、既存の薬の適応症では対応できない場合において、治療法があるのならばそれを保険適応してもよいのではないかという考え方は、守られるべきと考えられます。また、治療をせずに放置しておくとかえって悪化してしまい、患者のためにならないばかりではなく、余分な治療費がかかることにもなってしまいます。 確かに、保険財源の逼迫と国際化を考えれば、保険病名という考え方がそぐわない一方で、仮にもしそれを整理していくのなら、医療現場の事を勘案しながら国民的な合意を形成していくことが不可欠でしょう。 "

2014-10-23

"立命館大学薬学部 非常勤講師 横井正之先生 "